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Alt=第6回老舗訪問記 山形県酒田市「経済的自立が生んだ自由な空気の中で~その2」

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< あとがき >


酒田市民の舌に刻まれた菓子の味

酒田市民の舌に刻まれた菓子の味1
酒田市民の舌に刻まれた菓子の味1

酒田市で1884(明治17)年より続く『菓子の菊池』こと有限会社菊池菓子舗は、銘菓『酒田むすめ』の製造・販売元として、酒田市内はもちろん、近在では知らないものはいない菓子の名店だ。市内に4店舗を持ち、インターネットサイトを通じて全国への発送にも力を入れている。
2007(平成19)年に5代目の菊池恒夫氏が退き、6代目として長男の武彦氏が社長に就任した。武彦氏は主に商品開発と会社運営を。販売・顧客サービスなど店舗では恒夫氏の妻の玲子さんが活躍し、恒夫氏は主に地域の仕事に携わっている。

酒田市民の舌に刻まれた菓子の味2
酒田市民の舌に刻まれた菓子の味2

中通り商店街にある本店にお邪魔した。
ショーウィンドーの半分には伝統の和菓子、もう半分にはショートケーキやパイなどの洋菓子が並べられている。ジャンルにこだわらないのは、その時代のお客様の好みを知り、求めるものを提供するという姿勢からだ。 こだわるのは、原材料。だだちゃ豆やフルーツなど地元の名産を活かし、季節感あふれる和洋菓子をそろえている。
「新作は、近所のお茶屋さんに協力いただいて京都宇治抹茶を使った『抹茶クリーム大福』です」
最上級の抹茶と生クリーム、小豆あんの巧みな組み合わせで一番の人気商品となっている。

豆腐か菓子か

豆腐か菓子か
豆腐か菓子か

創業者は菊池幸助という中級武士だった。ちなみに、幸助は4代目まで受け継がれてきた名跡である。
「酒田には江戸時代からの店が多いですから、私たちなどは新しい方ですね」
初代幸助は庄内支藩のある松山城(現在は酒田市内)に仕えていたが、維新となり、何か食べ物を商おうと考えた幸助は、豆腐か菓子かと思案した。
「豆腐屋は朝が早くて大変そうだと、菓子に決めたそうです」と玲子さん。 もっとも、店が最初からあったわけではない。
「はじめは、荷車を引いて田舎のお祭りへ行っては、田楽や団子を売っていたと聞いております」
店を持ち、代を重ね、菊池は酒田一の菓子店と呼ばれるようになり、今に至る。
「お客様の気持ちになって、喜んでもらうことを大事にしています。本当においしいものをお客様にお届けするのが私たちのモットーです。また、時代時代で酒田のお客さまの好まれる味を作ってきた、それも長く続けてこられた理由の一つでしょうね」
『菓子の菊池』は、酒田市民の舌に長年馴染んできた名前なのである。

先代菊池幸助の働き

先代菊池幸助の働き
先代菊池幸助の働き

玲子さんとの結婚により、昭和51年に菊池に入った恒夫氏は、先代幸助の後ろ姿から仕事と菊池のやり方を覚えた。
「先代幸助が菊池を酒田一の菓子屋に育てたといっていいでしょう。戦後の一時代を築きあげた傑物でした」
昭和初期生まれの幸助が活躍したのは戦後のことだ。不自由な材料の中で工夫してサツマイモなどを使い菓子を作った。甘いモノに飢えていた時代、作れば何でも売れた。
近くの豪商の館・本間邸が公民館として使われていた時代があり、市民は披露宴をここで行った。菊池は、場所の利もあり引き出物菓子の営業に成功、一手に引き受けるようになった。

時代の求める味を作る

時代の求める味を作る
時代の求める味を作る

1960(昭和35)年頃、はじめてバターを使った創作菓子『日本海路』を販売。包装を自動化し工房は工場化していく。店舗を増やし、やがて酒田一といわれる菓子店になった。
しかし、挫折はあった。
1976(昭和51)年の酒田大火で、店は全焼。製造工場も全焼は免れたものの、半分以上が焼け、大切にしていた菓子の木型などが焼け落ちてしまった。
だが、すぐに近くのガレージを借りて菓子製造を再開。『酒田むすめ』の発売は大火の直後だった。これは、技術的にもエポックメーキングな商品で、包餡機を導入し、すべて手作りだった行程の一部を機械化した。
先代幸助のもと、菊池菓子舗は、大きく発展したのである。

モノをつくるだけでは人は呼べない

恒夫氏は2010(平成22)年に、本店のある中通り商店街振興組合理事長の任に就いた。
「人通りも少ないし、シャッターの閉まっている店も多いでしょう? シャッター通り化しているのです。なんとかいなくては」
酒田大火で全焼した商店街を、明るい、賑やかな街にと、路面や街路樹を整え、モダンにデザインされた都会風の商店街に生まれ変わった。同時に自動車の進入をシャットアウトした。
「商店街はショッピングモールと違って、車が停めづらいということもありまして、横浜元町を参考に街づくりを進めたのです。ですが、酒田は西風が強く、長いときは十月から三月まで雪や雨が続く。外を歩くのが辛いんです」
訪問者は激減、慌てた当時の商店主たちは、車が入れないからだと単純に思ったが、折しも郊外型のショッピングセンターの建設がはじまり、人の流れは街から郊外へと決定的に変わりつつあった。
「車を通行できるようにしたのですが、現状はご覧の通りです。今は、モノを作るだけではだめですね」

閉じたシャッターを開ける風を

閉じたシャッターを開ける風を
閉じたシャッターを開ける風を

先代幸助の長女である玲子さんは、焼失前の商店街の賑わいをよく覚えている。
「本当に賑やかな通りで、人がぎっしり歩いていたものです」 モノがなかった頃、モノのある場所に人はどんな苦労をしてもやってきたが、今やモノは溢れている。
どうしたら、商店から離れたゲストを呼び戻せるか。
中通り商店街は、2005(平成17)年より方言の温かみと懐かしさを味わえる商店街として、様々なイベントを開催し、盛り上げようとしているが、かつての盛況を取り戻すにはいたらない。
「魅力ある街づくり、新しい方策が必要なのです。しかも早急に」
恒夫氏は、人を動かす街の魅力を求めて日々まさに東奔西走している。店は繁盛していても、それだけではだめなのだ。地域で一番であることは、地域を引っ張っていくことと同意義だ。街あってこその店、危機感と使命感が両輪となり恒夫氏を突き動かしている。

もっけだの中通り商店街 http://mokkedano.jp/

家族の固い絆があるからこそ

家族の固い絆があるからこそ
家族の固い絆があるからこそ

菊池の人気商品、抹茶クリーム大福は、芦屋の有名な洋菓子店で修行していた武彦氏の手になるものだ。生クリームの扱いは洋菓子職人の修行の賜だ。製作に当たって最高級品の抹茶を求めたが、菓子店で取引できるのは菓子材料用品質の抹茶のみ。これに飽き足らない武彦氏は、同じ商店街の藤波茶舗の協力で宇治の銘茶『宇治上林春松』を納入してもらい、新製品を完成させた。
6代目の覚悟と技量は確かめた。店は玲子さんが、バックヤードでは先代夫人はるさんが現役だ。恒夫氏は、安心して店の外からもうひとつ大きな視点で菊池菓子舗をとらえることができる。
先代の背中が語ったことを中断させずに伝えていくために。

あとがき

菓子の菊池の見学を終えて

酒田市立琢成小学校のみなさん
菓子の菊池の見学を終えて1菓子の菊池の見学を終えて1
菓子の菊池の見学を終えて1
菓子の菊池の見学を終えて2菓子の菊池の見学を終えて2
菓子の菊池の見学を終えて2

佐藤百合菜さん 「今日は、酒田市内にある100年以上続いているお店、『菓子の菊池』に琢成小学校のみんなで行って、お話を聞いてきました。ええと、佐藤梯人さん、さいしょに感想をお願いします」
梯人さん 「え、はい。あの、この取材でお店のモットー、お客さんに言われてうれしいこと、がんばっていること、お店の長い歴史など、いろいろなことを学びました。それから、ごちそうになったお菓子がとてもおいしくて、びっくりしました」
百合菜さん 「おいしかったですよね。では、佐藤ひかりさん」
ひかりさん 「菊池でおいしいお菓子を100年以上も作ってきたのだと知って、びっくりしました。おかあさんやおとうさんが生まれる前からあるんだよね」
梯人さん 「ていうか、おじいちゃん、おばあちゃんが生まれる前?」
百合菜さん 「そうですね、100年以上だもんね。お店を続けられるヒケツを聞いたとき、お客様に合った対応をし、信らいしてもらうことだと答えてくれました。いつでも、お客様のことを考えてお仕事をしているなんてすごいなと思いました。
永田紗季さん、どうでしたか」
紗季さん 「酒田大火のときに全部燃えてしまったのに、がんばって建て直したなんて、すごいと思いました」
百合菜さん 「そうですよね。ずっと作ってきたから、わたしたちもおいしいお菓子が食べられるんですよね」
紗季さん 「菊池さんがお客さんからいわれていちばんうれしい言葉は『おいしかった』だそうです」
百合菜さん 「では、みなさん、ごいっしょに」

全員 「ありがとうございました! 抹茶クリーム大福、とってもおいしかったです!」

< 有限会社菊池菓子舗 >

住所: 山形県酒田市二番町8-19
電話: 0234-26-3331(本店)
創業: 1884年(明治17年) 1957年より有限会社
URL: http://www.kikuchikashiho.co.jp/

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